まとめて3時間より、1時間を3回
分散学習(distributed practice)は、同じ総学習時間を、間隔をあけて分けることです。逆に一度にまとめてやるのが集中学習、いわゆる詰め込みです。
これは思いつきの勉強法ではなく、100年以上かけて検証されてきたテーマです。Cepeda らのメタ分析(2006)は、184本の論文・317の実験・839件の比較を集めて、間隔をあけたほうが後のテストで成績が良いことを確認しています。
さらに Dunlosky らのレビュー(2013)は、学生がよく使う10の学習法を「効用」で格付けしました。最上位の「高い効用」に入ったのは練習テストと分散学習の2つだけです。一方で、要約・ハイライト(マーカー)・語呂合わせ・イメージ化・再読の5つは「低い効用」とされました。教科書にマーカーを引いて読み返す、という一番よくやる勉強が、この評価では下位に置かれています。
では、どれくらいあけるのか
「間隔をあけましょう」で終わる記事は多いのですが、実際に困るのは日数です。ここに答えを出したのが Cepeda らの2008年の研究です。
1,350人以上に事実を覚えてもらい、最大3.5か月あけて復習させ、さらに最大1年後にテストしています。
分かったことは2つあります。
- 間隔を広げていくと成績は上がるが、ある点を過ぎると下がる。山がある
- 山の位置は「テストまでの残り時間」で動く。数週間先のテストなら残り期間の約20%、1年先なら約5%
つまり「毎日復習」でも「試験直前にまとめて」でもなく、本番までの残り時間に比例した間隔が良い、ということです。
試験日から逆算する
論文がはっきり数字を出しているのは両端(数週間で約20%、1年で約5%)だけです。その間は書かれていないので、下の表は両端からの目安として読んでください。
| 本番まで | 復習間隔の目安 | 実際の運用 |
|---|---|---|
| 4週間 | 5〜6日 | 週1回、同じ範囲に戻る |
| 8週間 | 10日〜2週間 | 隔週で戻る |
| 3か月 | 2〜3週間 | 月2回、範囲を回す |
| 6か月 | 3〜4週間 | 月1回、範囲を回す |
生成AIパスポートは年5回(2月・4月・6月・8月・10月)、G検定はオンラインが年6回あります。申込の時点で試験日が決まるので、逆算はその日にできます。
詰め込みが効くのは、翌日までです
分散学習の研究には、詰め込みが勝つ場面もはっきり出ています。Roediger と Karpicke の2006年の実験では、最終テストが5分後なら、繰り返し読んだほうが成績が良いという結果でした。逆転が起きるのは2日後・1週間後のテストです。
だから「明日が試験」なら詰め込みで構いません。1週間以上あるなら、分けたほうが得です。
忘れかけているのは、失敗ではありません
間隔をあけると、次に開いたときに「前より忘れている」と感じます。これが嫌で毎日同じ所を読み返してしまうのですが、思い出しにくい状態から思い出す作業そのものが記憶を強くします。忘れかけていることは、間隔が効いている合図です。
この点は次の記事につながります。読み返すのではなく思い出す、という話です。
参考にした研究
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380. 論文情報
- Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., Wixted, J. T., & Pashler, H. (2008). Spacing effects in learning: A temporal ridgeline of optimal retention. Psychological Science, 19(11), 1095–1102. 論文情報(ERIC)
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. 概要(APS)
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning. Psychological Science, 17(3), 249–255. PubMed