「自分に合った学習スタイル」は、探しても見つかりません

勉強法

勉強を始める前に「自分に向いたやり方」を探してしまうことがあります。ただ、その探しものは30年以上続いていて、まだ見つかっていません。何を探すのをやめて、代わりに何をするかの話です。

何が主張されているのか

「学習スタイル」の説には、実は2つの別々の主張が混ざっています。

  1. 人には好みがある。文章で読むほうが好きな人、聞くほうが好きな人がいる
  2. 好みに合わせて教え方を変えると、成績が上がる

1つ目は、ほぼ誰も否定していません。好みは実際にあります。問題は2つ目です。これはメッシング仮説(meshing hypothesis)と呼ばれていて、教育の現場で学習スタイル診断が使われる根拠になっているのは、こちらのほうです。

検証の形は決まっている

Pashler・McDaniel・Rohrer・Bjork の2008年のレビューは、この主張を確かめるにはどういう実験結果が出なければならないかをはっきり示しました。

必要なのは交互作用です。つまり、

  • 「視覚型」の人は、文章で教わったほうが成績が良い
  • 「聴覚型」の人は、音声で教わったほうが成績が良い

という逆転が出なければなりません。片方のやり方が全員にとって良い(例:全員が図を見たほうが分かる)だけでは、学習スタイルの証拠にはなりません。

彼らはこの条件を満たす研究を文献の中から探しました。結論は、この交互作用を示す適切な証拠はほとんど見つからなかったというものです。そのうえで「学習スタイル診断を一般的な教育実践に組み込むことを正当化できる証拠は現時点で存在しない」「限られた教育資源は、強い証拠のある他の実践に使うほうがよい」と書いています。

そのあとに直接試した研究も、同じ結果でした

レビューの指摘を受けて、条件を整えて直接テストした研究も出ています。

Rogowsky・Calhoun・Tallal(2015)は、大学教育を受けた成人を対象に、聴覚型か視覚型かを事前に測ったうえで、同じ内容をオーディオブックで聞かせる群と電子テキストで読ませる群に分けました。結果は、学習スタイルの好みと、教え方の相性に、意味のある関係は見つからなかったというものでした。

2020年の研究(Papadatou-Pastou ら)も、題名がそのまま結論になっています——「学生の学習スタイルの好みに基づいて指導を行っても、学習は改善しない」。

誤解のないように

この話は「好みを無視しろ」でも「動画は無駄」でもありません。

  • 続けやすいやり方を選ぶのは、まったく合理的です。苦痛だと続かず、続かなければ何も残りません
  • 内容によって適切な形式は変わります。図で説明すべきものは、全員にとって図のほうが分かりやすい。これは学習スタイルの話ではありません
  • 否定されているのは「自分のタイプに合わせれば成績が上がる」という一点だけです

だから、何に時間を使うか

「自分に合ったやり方探し」に時間を使わないと決めると、その時間が空きます。空いた時間の使い道は、証拠のはっきりしているほうへ回すのが得です。

Dunlosky らのレビュー(2013)が10の学習法のうち最上位の「高い効用」に置いたのは2つだけでした。

  • 練習テスト(自分で思い出す・問題を解く)
  • 分散学習(間隔をあけて繰り返す)

どちらも「どんな人に向いているか」を問わない方法です。タイプ診断を受けなくても今日から始められます。

このサイトでいえば、動画から入ってもPDFから入っても構いません。ただし、どこから入っても最後は問題を解いてください。残る量が変わるのはそこです。

参考にした研究

  • Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105–119. 論文情報(USF リポジトリ)
  • Rogowsky, B. A., Calhoun, B. M., & Tallal, P. (2015). Matching learning style to instructional method: Effects on comprehension. Journal of Educational Psychology, 107(1), 64–78. ERIC
  • Papadatou-Pastou, M. ほか (2020). Providing instruction based on students' learning style preferences does not improve learning. Frontiers in Psychology, 11, 164. 全文(オープンアクセス)
  • Dunlosky, J. ほか (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. 概要(APS)

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