教科書の作りが、練習の順番を決めてしまう
問題集は章ごとに並んでいます。第2章の練習問題を解くとき、あなたはまだ問題を読む前から「これは第2章の知識で解く」と知っています。
ところが本番は違います。生成AIパスポートは60問、G検定は145問程度が、章の区別なく混ざって出ます。最初にやるべき仕事は「これは何を聞かれているのか」を見抜くことで、練習ではその仕事だけ免除されていたわけです。
これを検証したのが、Rohrer・Dedrick・Burgess の2014年の研究です。
授業でそのまま試した
対象は中学1年生140人。実際の数学の授業で、9週間にわたって練習問題を出しました。
- 一方は章ごとにまとめた練習(同じ種類の問題が並ぶ)
- もう一方は種類を混ぜた練習(違う種類が交互に出る)
問題の中身も数も同じで、並び順だけを変えています。そして練習が終わって2週間後に、予告なしのテストをしました。
| 練習の並べ方 | テストの正答率 |
|---|---|
| 混ぜて練習した | 72% |
| 章ごとにまとめて練習した | 38% |
効果量は d = 1.05(95%信頼区間 0.80〜1.30)。並べ替えただけで点数がほぼ倍になりました。しかもこの差は、4種類の問題すべてで確認されています。
なぜ差がつくのか
論文の説明はこうです。まとめて練習していると、問題を読む前に解き方が決まっているので、「どの解き方を選ぶか」という一番大事な判断を一度も練習しないまま本番に行くことになります。混ぜて練習すると、毎回その判断からやり直すことになります。
資格試験の四択でも同じことが起きます。第4章の練習中なら、選択肢に「著作権」と出てきた時点で答えの見当がつきます。本番でその補助は消えます。
なお論文自身が正直に断っているとおり、この効果には分散学習の効果も混ざっています(混ぜると同じ種類の問題が自然に日をまたいで散らばるため)。順番だけの効果を分離した別の研究でも大きな効果が出ている(Taylor & Rohrer, 2010 で d = 1.23)ので、両方が効いていると考えるのが妥当です。
混ぜると、手ごたえは悪くなります
ここが実行を邪魔する所です。混ぜて練習している最中の正答率は、まとめて練習しているときより下がります。進みも遅く感じます。
これは「望ましい困難(desirable difficulty)」と呼ばれる現象で、練習中の楽さと、後に残る量が逆を向くという話です。手ごたえで判断すると、必ず効かないほうを選んでしまいます。読み返しが効いている気がするのと同じ構図です。
そのまま使える3つの手順
- 章の演習が一周したら、そこからは混ぜる。初めて習う内容までいきなり混ぜる必要はありません。効くのは「一度は解けるようになったあと」です
- 週に一度は全範囲から。模擬試験がその役目です。範囲を絞らずに解くと、章ごとの演習では見えない取り違えが出ます
- 間違いは「知らなかった」と「取り違えた」に分ける。混ぜたときにだけ増える間違いは、知識ではなく見分けの問題です
3つ目については、キーワード単位で弱点を出す診断を用意してあります。「第4章が弱い」では復習できませんが、「著作権の例外規定が弱い」なら手が打てます。
参考にした研究
- Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Burgess, K. (2014). The benefit of interleaved mathematics practice is not limited to superficially similar kinds of problems. Psychonomic Bulletin & Review, 22(5), 1323–1330. 論文情報(DOI)
- Taylor, K., & Rohrer, D. (2010). The effects of interleaved practice. Applied Cognitive Psychology, 24(6), 837–848.
- Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498. 論文情報(DOI)
- Dunlosky, J. ほか (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. 概要(APS)