実験の作り
Karpicke と Roediger が2008年に Science に出した研究です。大学生にスワヒリ語と英語の単語ペア40組を覚えてもらいました。
全員がまず「学習 → テスト」を繰り返して、40組すべてを一度は正解できる状態にします。ここまでは条件による差がありません。実際、学習中の成績も、4つの条件でまったく同じでした。
分かれるのはこの先です。一度正解できた単語を、そのあとどう扱うかを4通りにしました。
- 学習も続けるし、テストも続ける
- 学習からは外すが、テストは続ける
- 学習は続けるが、テストからは外す
- 学習からもテストからも外す
そして1週間後に、全員に最終テストを受けてもらいました。
結果
| 一度覚えたあとの扱い | 1週間後の正答率 |
|---|---|
| 思い出す作業を続けた(2条件) | 約80% |
| テストから外した(学習は続けた) | 36% |
| テストからも学習からも外した | 33% |
繰り返し読んでも、1週間後に測れる効果はありませんでした。すべての単語を毎回読み直していた条件(36%)と、読みもテストもしなかった条件(33%)が、ほとんど同じだったからです。
差の大きさは効果量で d = 4.03。心理学の実験では極端に大きい値です。分布そのものが重なっておらず、テストから外した側は10〜60%、思い出し続けた側は63〜95%の範囲に収まりました。両者は一人も入れ替わっていないということです。
一番こわいのは、本人に差が見えないこと
この研究にはもう一つ結果があります。最終テストの前に「1週間後に何語思い出せると思うか」を全員に予想させたところ、4条件のどれも「約50%」でした(20.8/20.4/22.0/20.3語)。統計的な差はありません。
つまり、実際には80%と33%に分かれる相手が、自分では同じくらいだと思っていたわけです。読み返すと文字に見覚えが出てくるので、「分かっている」という感覚だけが増えます。この感覚は当てになりません。
Dunlosky らのレビュー(2013)でも、再読は「低い効用」、練習テストは「高い効用」と、正反対の格付けになっています。
試験勉強での使い方
- 教科書を読む前に、その章の問題を解いてしまう。解けなくて構いません。解けなかったという事実が、読むときの効き方を変えます
- 読み返したくなったら、代わりに解く。同じ10分なら、読む10分より解く10分のほうが後に残ります
- 答えを見る前に、必ず一度は自力で言葉にする。選択肢を眺めて「これっぽい」で進めると、思い出す作業になりません
なお、直後のテストなら読み返しのほうが強いことも分かっています(Roediger & Karpicke, 2006)。明日が試験なら読み返しで構いません。逆転するのは2日後以降です。
「解いて終わり」にしない
思い出す作業が効くとはいえ、間違えた問題を放置すれば同じことです。間違えた問題だけをもう一度出すところまでが一組になります。このサイトでは、間違えた問題は自動で復習の一覧に入り、正解すると消えます。
そしてもう一つ、解く順番にも研究があります。章ごとにまとめて解くか、混ぜて解くかで結果が変わる、という話です。
参考にした研究
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966–968. 全文(PDF)
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. PubMed
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. 概要(APS)