同じ78%が、2通りある
60問の模試で47問正解、正答率78%。この2人を比べてください。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 自信あり × 正解(本物) | 44問 | 29問 |
| 自信あり × 不正解(思い込み) | 2問 | 11問 |
| 自信なし × 正解(まぐれ) | 3問 | 18問 |
| 自信なし × 不正解(素直な未学習) | 11問 | 2問 |
| 正答率 | 78% | 78% |
点数はまったく同じです。でも中身は正反対です。
- Aさんは、分かっている問題は分かっているし、分かっていないことも分かっています。残り13問の弱点は自分で名指しできます
- Bさんは、当たった47問のうち18問がまぐれ。そして11問は「分かっている」と思ったまま落としています。本人は47問ぶんの実力があると思っています
本番で問題の言い回しが変わったとき、まぐれの18問は落ちます。思い込みの11問も落ちます。Bさんの実力は、本人の認識より29問ぶんに近い。
数字にするとこうなります。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 較正スコア(自信と結果が一致した割合) | 92 | 52 |
| 思い込み率(自信ありのうち落とした割合) | 4% | 28% |
| まぐれ率(正解のうち自信が無かった割合) | 6% | 38% |
正答率は同じでも、この3つはまったく違います。そして正答率だけを見ている限り、この違いには一生気づけません。
研究が言っていること
① 自分の出来は、自分では見えない
Karpicke と Roediger の2008年の研究では、1週間後の最終テストで80%取る条件と33%しか取れない条件に分かれました。ところが、テスト前に「何語思い出せると思うか」を聞いたところ、4条件のどれも「約50%」(20.8/20.4/22.0/20.3語)で、統計的な差はありませんでした。
実際には2倍以上の差がある相手が、自分では同じくらいだと思っていたわけです。
② 過信していた人ほど、後で覚えていない
Dunlosky と Rawson の2012年の研究は、この先を調べています。大学生に用語の定義を自分のペースで覚えてもらい、テストのたびに「自分の答えはどれくらい合っていたか」を判断させました。
結果は題名のとおりです——「過信は成績不振を生む(Overconfidence produces underachievement)」。自己評価の過信が少なかった学生ほど、後の保持が明らかに良かったのです。
仕組みははっきりしています。「もう覚えた」と判断した時点で、人はその項目の勉強をやめます。判断が甘ければ、まだ覚えていないものを覚えたことにして切り上げてしまう。過信そのものが、勉強を早く終わらせる装置になっています。
③ しかも、放っておいても直りません
Hacker らの2000年の研究は、実際の授業で行われました。大学生96人が、学期を通して複数回の試験のたびに「何点取れそうか」を予測し、試験後に「何点取れたか」を推定しました。
- 成績上位の学生は予測が正確で、回を重ねるごとにさらに正確になった
- 最下位の層は、予測でも事後の推定でもひどく過信したままだった
そして重要なのがもう一点です。学生の判断は、前回の「成績」ではなく前回の「判断」に引きずられていました。
つまり、点数というフィードバックを受け取っても、見積もりの癖のほうは自動では直らない。直すには、見積もりそのものを毎回記録して、結果と突き合わせるしかありません。
4つに分けると、次にやることが決まる
| やること | |
|---|---|
| 思い込み(自信あり×不正解) | 最優先。正解の理由だけでなく、自分が選んだ選択肢がなぜ違うかまで言えるようにする |
| まぐれ(自信なし×正解) | 間隔をあけない。当たっただけで直っていないので、近いうちにもう一度当てられるか試す |
| 素直な未学習(自信なし×不正解) | 普通に覚える。実は一番安全な箱です。自分で名指しできているので |
| 本物(自信あり×正解) | 触らない。時間を使わない |
「間違えた問題をやり直す」は誰でもやっています。この4つに割ると、同じ「間違えた問題」の中でも、どれから手を付けるかが決まります。
「自信なし」と付けるのは、負けではありません
印を付けるのは、自分の弱さを認める作業に見えるかもしれません。でも研究が言っているのは逆で、正直に印を付けられる人のほうが、後で覚えているということです。
一方で、保険のつもりで全部に「自信なし」を付けても意味はありません。全部に付ければ、当たった問題まで「まぐれ」に入り、較正スコアは下がります。目的は点数を守ることではなく、自分の見積もりを正確にすることです。
迷わなかった問題には付けない。迷ったら付ける。それだけで十分です。
参考にした研究
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966–968. 全文(PDF)
- Dunlosky, J., & Rawson, K. A. (2012). Overconfidence produces underachievement: Inaccurate self evaluations undermine students' learning and retention. Learning and Instruction, 22(4), 271–280. 論文情報(ERIC)
- Hacker, D. J., Bol, L., Horgan, D. D., & Rakow, E. A. (2000). Test prediction and performance in a classroom context. Journal of Educational Psychology, 92(1), 160–170. 論文情報(ERIC)